ハーブの女王・ヨモギ——「飲む美容液」栄養士が解説

先日、ある50代の女性に会った。

私には30代半に見えていた。お世辞ではない。本当にそう見えたのだ。

彼女の秘密を聞いて、少し拍子抜けした。

「学生の頃から、ヨモギを飲んでるの。それくらいかな」

——ヨモギ。草餅のあれ。おばあちゃんが摘んでくる、あの野草。

正直、最初は信じられなかった。美容医療でもなく、高級なサプリでもなく、道端に生えている草が?

でも、斜に構えているだけじゃ何も変わらない。そう思って、調べ始めた。


なぜ今、「飲むヨモギ」なのか

肌のくすみが気になる。夕方になると脚がパンパン。高い化粧品は手が出ないけど、将来のために何かしたい——。

そんな10代、20代の悩みに、ヨモギは静かに応えてくれる。

「塗るケア」は肌の表面にしか届かない。でも「飲むケア」は、体の内側から巡りを整えてくれる。血流、腸内環境、代謝。肌の調子は、そういう見えない土台の上に成り立っている。

美容クリニックの専門家も、ヨモギ茶を「体質改善・血行促進を通じて肌の調子を整えるインナーケア」として紹介している。派手な即効性はない。でも、コーヒー1杯をヨモギ茶に置き換えるだけで、「なんか最近、調子いいかも」が手に入るとしたら——それって、かなりコスパのいい投資じゃないだろうか。


老け見えをブロックする「サビ」と「コゲ」の話

体の「サビ」を防ぐ

りんごを切って放置すると、茶色くなる。あれが「酸化」だ。実は、私たちの体の中でも同じことが起きている。

活性酸素という物質が増えすぎると、細胞が傷つく。シミやシワの原因になる「体のサビ」だ。

ヨモギには、ポリフェノールやフラボノイドという成分が含まれている。関西医療大学の研究によると、これらの成分は活性酸素による細胞のダメージを抑える働きがあるという。日々のハーブティーとして取り入れることで、体を「サビにくく」してくれる可能性があるのだ。

肌の「コゲ」を防ぐ

もうひとつ、老化の原因として注目されているのが「糖化」。体内で余った糖がタンパク質と結びつき、AGEsという物質を作り出す。これが肌の黄ぐすみやハリの低下につながる。いわば、体の「コゲ」だ。

ヨモギ抽出物には、この糖化を抑える可能性があることが研究で示されている。甘いものが好きな人ほど、ヨモギを相棒にする価値があるかもしれない。


むくみ、冷え、便秘——日々の不調にも

夕方の脚のパンパン、朝の顔のむくみ

ヨモギには穏やかな利尿作用がある。体に溜まった余分な水分を、そっと外に出してくれる。

「夕方になると靴がきつい」「朝、鏡を見て顔がむくんでいる」。そんな悩みを抱えているなら、試してみる価値はある。体の「溜め込みグセ」を、少しずつリセットしてくれる。

腸を整えて、肌荒れを防ぐ

ヨモギは不溶性食物繊維を多く含んでいる。腸の中で不要なものを絡め取り、外に出す手助けをしてくれる。

便秘は、肌荒れの意外な原因だ。腸内環境が整うと、肌の調子も自然と上向いていく。見えないところから、静かにきれいを支えてくれる。


代謝を整えるという「おまけ」

少し専門的な話になるけれど、韓国で行われた臨床試験がある。

プレ糖尿病の人たちにヨモギ抽出物を12週間飲んでもらったところ、血糖値やインスリン抵抗性、脂質のバランスが改善したという報告だ。

血糖値の急上昇を抑えることは、太りにくさや老化防止にもつながる。「ダイエットしてるわけじゃないけど、スタイルはキープしたい」。そんな人には、代謝の土台を整えるという意味で、心強い味方になってくれるかもしれない。


失敗しないヨモギの取り入れ方

1日1〜2杯で十分

ガブ飲みする必要はまったくない。コーヒーやジュースの代わりに、1日1〜2杯。それだけでいい。

即効性を求めるものではなく、「続けること」に意味がある。半年後、1年後に、ふと気づく。「あれ、なんか調子いいかも」と。

カフェインレスという嬉しい発見

私も実際にヨモギパウダーを買って、お湯で溶いて飲んでみた。驚いたのは、カフェインが入っていないこと。夜でも気にせず飲める。リラックスタイムの相棒として、なかなか優秀だ。

ただ——正直に言う。

味は、おいしくない。

香りはいい。草原を思わせる、清々しい香り。でも味は、まぎれもなく薬草。最初は「これ、続けられるかな」と思った。

でも不思議なことに、半年経った今も続いている。良薬口に苦し、という言葉があるけれど、その「苦さ」がどこか癖になる。体が欲しているのかもしれない。

味が気になる人は、パウダーよりもヨモギ茶を選ぶといい。加工されている分、飲みやすくなっている。

知っておくべき注意点

天然だから安全、とは限らない。

キク科の植物にアレルギーがある人は、症状が出る可能性がある。飲みすぎると、下痢やお腹の不調を感じることも。

妊娠中の人は特に注意が必要だ。ヨモギには子宮収縮を促す可能性が指摘されている。濃い煎じ茶の常用は避けた方がいい。

持病がある人、薬を飲んでいる人は、始める前に医師や薬剤師に相談を。賢く使うのが、本当の美容賢者だ。


「飲むだけでキレイ」という幻想

最後に、大事なことを伝えておきたい。

ヨモギ茶を飲むだけで、シワやシミが消えるわけではない。

食事、睡眠、運動、ストレス管理——そういう土台があってこそ、ヨモギの効果も生きてくる。抗酸化、血流改善、腸内環境。それらは、健やかな暮らしの「上乗せ」として働くものだ。

私自身、半年続けてみて、アンチエイジング効果は正直まだわからない。5年後、10年後にならないと、本当の答えは出ないだろう。

でも、疲れにくくなった気がする。お通じも良くなった。肌の調子が安定している気がする。プラセボかもしれない。でも、それでもいい。体にいいことをしている、という小さな自信が、日々の暮らしを少し明るくしてくれている。


ヨモギは、地味だ。

SNS映えしないし、劇的なビフォーアフターも見せられない。

でも、静かに、着実に、体の内側から働きかけてくれる。

今日から始めれば、5年後の肌は、きっと少しだけ違っている。10年後には、もっと。

草餅でおなじみのあの野草が、実は最強のインナーケアだったなんて——なんだか、少し愉快じゃないだろうか。


明日の朝、スーパーやドラッグストアで「ヨモギ茶」を探してみてほしい。

ネットでポチッとするのもいい。

小さな一歩が、未来の自分への、いちばん確かな投資になる。

参考文献

  1. 薬草園「ヨモギの効能・効果」
    https://www.yakusou-ten.com/yomogi
  2. 共立美容外科「ヨモギ茶の効果について」
    https://www.kyoritsu-biyo.com/column/cosme/effects-of-mugwort-tea/
  3. 関西医療大学紀要「ヨモギの薬理作用に関する総説」
    https://www.kansai.ac.jp/pdf/kuhs_kiyo_06/02_rv_toda.pdf
  4. 鹿児島大学学術情報リポジトリ「ヨモギの抗酸化作用に関する研究」
    https://ir.kagoshima-u.ac.jp/record/5812/files/renken573.pdf
  5. ScienceDirect「Artemisia princeps抽出物のプレ糖尿病患者への効果(韓国RCT)」
    https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S187638201200011X
  6. わかさの秘密「ヨモギの成分情報」
    https://himitsu.wakasa.jp/contents/mugwort/
  7. 糖化ストレス研究会「抗糖化素材のスクリーニング研究」
    https://www.toukastress.jp/webj/article/2017/GS17-26J.pdf
  8. japonekko「ヨモギと抗糖化」
    https://japonekko.jp/topics/498/
  9. PubMed Central「Artemisia princepsの神経保護作用に関する研究」
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4363335/

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